客観的に異常を示すサインを徴候と呼びます。脳に異常が発生したとき、その異常によって引き起こされる徴候は、神経疾患がどの脳の部位に由来するかを知る大きな手がかりとなります。
まずは脳がどのような部位に分かれているかを大まかに把握しましょう。

図1.イヌの脳
脳は、大きく分けて、「大脳(終脳)」、「小脳」、「間脳」および「脳幹」の4つの部位から成り立っています。
特に脳幹は、「中脳」、「橋」、「延髄」から構成されています。間脳は「視床」と「視床下部」から構成されます。視床下部といえば、多数のホルモンが分泌される部位として有名です。
大脳は、「大脳皮質」、「大脳辺縁系」から構成されます。
それぞれの部位の基本的な役割は下表のとおりです。
小脳:骨格筋運動の協調性制御。
大脳辺縁系:情動や記憶を司る。
大脳皮質:知覚や思考、記憶などを司る。
間脳の視床:感覚系神経を中継する。
間脳の視床下部:自律神経や内分泌系の中枢。
延髄:呼吸運動、心臓の拍動、消化管運動を制御。
中脳:視覚反射、瞳孔反射、眼球運動を制御。
橋:運動に関する情報を大脳から小脳へと伝える。
では、各部位が障害されたとき、どのような症状が認められるのでしょうか?
それぞれの症状から推測できる病変部位を以下にまとめます。
小脳:企図振戦、測定障害(測定過大、測定過少)、後弓反張(除小脳固縮)、前庭症状、開脚姿勢、威嚇反応の欠如(同側性)、瞳孔サイズの異常(散瞳、対抗反射低下)
大脳皮質:てんかん発作、顔面知覚の低下、行動異常、聴覚障害、姿勢反応の低下や消失(病変と反対側)
大脳辺縁系:てんかん発作、行動異常
延髄:呼吸障害、心血管系への異常、意識障害
中脳:片側不全麻痺、四肢麻痺、後弓反張(除脳固縮)
特に、青線の異常を覚えておきましょう。ここでは、難しい単語も出てきているので、わかりにくい用語について説明していきます。
小脳が障害された際に生じる企図振戦は、目標に向かう意図的な運動の際、目標物に近づくと手が震えることを指します。
測定障害は、動作における頻度や範囲、強度を読み間違う異常です。例えば、実際に必要な歩幅より、過度に大きく歩幅を取ってしまう異常などが挙げられます。このような測定障害が過大なものを測定過大、過少なものを測定過少と呼びます。イヌの場合は、ほとんどが測定過大であるとされています。
後弓反張(除小脳固縮)は、小脳吻側の障害により背中を反らせる異常です。
大脳が障害されたとき生じるてんかん発作は、異常な興奮が起こることで、けいれんや意識障害が起きることです。
中脳の障害で起きる除脳固縮は、四肢の伸展硬直や後弓反張が認められる異常です。小脳の除小脳固縮とも似たような症状を示します。ただし、除脳固縮は意識レベルに変化がある一方、除小脳固縮は様々な状態があるなどの違いがあります。似ている用語ですが、きちんと区別しましょう。
では、最後に最も重要な項目をまとめておきます。最低限覚えておきましょう。
小脳の異常:企図振戦、測定障害、後弓反張
大脳の異常:てんかん
延髄の異常:呼吸や心血管系など生命維持にかかわる異常


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