国家試験で、MACや血液/ガス分配係数と言われたら、吸入麻酔薬に関して問われています。
吸入麻酔薬は外科手術によく用いられる全身麻酔薬です。
全身麻酔薬は外科手術などに使われ、次の4要素が重視されます。
【全身麻酔の4要素】
- 意識消失
- 鎮痛
- 筋弛緩
- 有害反射の消失
吸入麻酔薬には、イソフルランやセボフルランなどが存在します。
吸入麻酔薬は、上記以外にも鎮静、気管支拡張などの作用を有します。
吸入麻酔薬は、爬虫類や鳥類も含むすべての動物種で使用可能であり、麻酔深度の調節もしやすいというメリットがあります。
一方で、鎮痛作用はほとんどありません。そのため、鎮痛薬の併用が、手術時に求められます。
では、吸入麻酔薬には、どのような種類があるのでしょうか?
以下の吸入麻酔薬の特徴を見ていきましょう。
ハロタン:導入・覚醒が遅い。肝毒性がある。呼吸抑制あり。悪性高熱の可能性あり。カテコールアミンの不整脈作用に対して心筋の感受性を上げる。
イソフルラン:導入・覚醒が比較的速やか。気道刺激性が高い。肝・腎毒性なし。ハロタンより強い呼吸抑制を引き起こす。血圧低下や筋弛緩。
セボフルラン:急速で円滑な導入・覚醒。気道刺激性がない。イソフルランと同様の代謝様式を示す。
デスフルラン:非常に速い導入・覚醒。気道刺激性が強い。肝・腎毒性なし。
笑気:亜酸化窒素(N2O)のこと。ハロタンやイソフルラン、セボフルラン、デスフルランは揮発性麻酔薬であるのに対し、笑気はガス麻酔薬である。導入・覚醒が速やかで、鎮痛作用が強力である。また、笑気は弱い鎮静・催眠作用を有する。肝・腎毒性がない。ほかの揮発性吸入麻酔薬の体内摂取を促進する二次ガス効果を有する。気腫や胃拡張、腸管閉塞、眼科手術には禁忌。
最小肺胞内濃度(Minimum Alveolar Concentration: MAC)
最小肺胞内濃度(Minimum Alveolar Concentration: MAC)とは、1気圧下で、動物の50%を不動化するのに必要な吸入麻酔薬の最小肺胞内濃度(%)です。このときを1 MACとします。
外科手術の際は、1.5 MACが必要とされます。また、2 MACで深麻酔となります。
MACの値が小さいほど強力な麻酔薬と言えます。なぜなら、低濃度であっても50%の動物を不動化するイという同じ条件に至れるからです。すなわち、イヌで言うと、下表の中でハロタンが最も強力な麻酔薬と言えます。
下表では様々な吸入麻酔薬のMACが示されていますが、イヌのイソフルランの最小肺胞濃度(MAC)は1.3%であり、覚えておくべきでしょう(R6年必須43で出題)。なぜなら、国家試験にも出題されているからです。
他の吸入麻酔についても下表を参考に、イメージだけしておいてもいいでしょう。
表1. 吸入麻酔薬の最小肺胞濃度
| 吸入麻酔薬 | イヌ | ネコ | ウマ | ヒト |
|---|---|---|---|---|
| ハロタン | 0.87% | 1.19% | 0.88% | 0.76% |
| イソフルラン | 1.3% | 1.63% | 1.31% | 1.2% |
| セボフルラン | 2.34% | 2.58% | 2.34% | 1.93% |
| デスフルラン | 7.20% | 9.80% | 7.23% | 6.99% |
| 笑気 | 188~297% | 255% | 190% | 101.1% |
獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠 獣医臨床麻酔学より
血液/ガス分配係数

血液/ガス分配係数とは、吸入麻酔薬が血液と平衡状態となったとき、血中濃度を吸入濃度で割った値です。
血液/ガス分配係数が小さければ、血液に溶けにくいことを示します。肺で吸収された麻酔薬は、血液を通って、脳へ移行します。もし血液に溶けにくければ、その分早く脳へたどり着くことができ、麻酔の導入が早くできます。
また、血液/ガス分配係数が小さければ、血液に溶けにくいため、呼気中から抜け出る麻酔薬も多くなり、早く覚醒することができます。
早く導入し、覚醒も速い方が扱いやすいため、血液/ガス分配係数が小さい方が、吸入麻酔薬として扱いやすいと言えるでしょう。
それぞれの吸入麻酔薬の血液/ガス分配係数は、次のようになっています。
デスフルラン(0.42)<笑気(0.49)<セボフルラン(0.69)<イソフルラン(1.41)<ハロタン(2.36)
まとめると、血液/ガス分配係数は、吸入麻酔の導入・覚醒速度に影響を与えるのです。

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